それが人生だと思う。

(2025年5月30日に外部インタビュアーによるインタビューを行った内容を掲載しています)
ー 神谷会長が4代目の社長を歴任されたと伺いましたが、会長はどのような経緯で拓進設備工業に入社されたのでしょうか?
埼玉県の普通高校を卒業し、最初に就職した会社を退社した時、ふと街を眺めていたら、たくさんのビルが建っているのが目に入って来ました。その時、「設備工事はこれからではないか」と感じました。たまたま手に取った求人誌『ビーイング』をパラパラとめくっていたら、拓進設備工業の社員募集を見つけたんです。綾瀬の4丁目にあった事務所に面接に行って、社長に会って、「やってみるか」って。そのまま入社したのが20歳の頃ですね。当時は創業からまだ4年目の会社でした。
ー 最初はどんな仕事からスタートしたのでしょうか?
設備を覚えるには現場からだと言われたので、「監督業かな?」と思ったら、雑工事ですよ。配管を切ったり、つないだり、運んだり。朝から晩まで汗だくで作業していましたね。最初の5年間はずっと現場でした。会社が小さかったから、別の会社さんの大きな現場に監督として仕事をすることになりまして、そういう場所で、大きな仕事を経験させてもらったことが今でも大きな財産になっています。「一流の仕事を覚えればいつでも三流にはなれるが、三流から一流になるのは大変だ」と。本当にそうで、大きい現場ができれば小さい現場にも余裕を持って対応できるようになる。そこで仕事の基本や、現場の空気感、人の動かし方、段取りの大切さを、全部学びました。
ー 社長になられてからは、会社のどんな部分を大切にされてきたのでしょうか?
平成22年に社長を引き継いだとき、売上は7億円でした。そこから20億円近くまで伸ばすことができたんですが、それは「制度を整えたから」じゃなくて、「人が残ってくれたから」だと思ってます。私がずっと言ってきたのは、「うちの会社の商品は“人”だ」ということ。お客様に接するとき、社員の表情、挨拶ひとつで会社の印象は決まる。図面や設備よりも、現場で動く人間が信頼をつくるんです。だから、技術も大事だけど、人間として恥ずかしくないように、誠実に仕事をしてくれる人がいてくれたからこそ、ここまで来られた。
ー 「会社は家族のような存在だ」ともおっしゃっていました。
会社にはいろんな人がいます。仕事ができる人もいれば、ちょっと不器用な人もいる。でも、大事なのは「仲良くできるかどうか」なんですよね。仲良くなれなきゃ助けてもらえないし、困ってるときに声もかけられない。だからうちは、とにかく“顔を合わせる時間”を大切にしています。昔は居酒屋で飲み会を開いたりもしたけど、今はもっと工夫しています。たとえばBBQのときに健康診断を一緒にやったり(笑)、みんなで共同作業をしてみたり。そうやって「一緒に手を動かす」ことで、自然と信頼関係が生まれるんです。

ー 若い人の育成について、どのようにお考えですか?
若い人には、どんどん立場を与えるようにしています。年功序列ではなく、「立場が人を育てる」というのが私の考え方です。うちが拠点を置く足立区は23区の中でも平均年収が一番下の方のエリアで、家庭の事情が大変な子もいます。でもね、頑張れば必ず報われるようにしています。課長になってる子もいるし、ちゃんと給料も上がってる。「この子がここまで来たか」と思うことも多いですよ。みんな「向いてるかどうか」で迷うけど、やってみなきゃ分からないんです。だから「まずはやってみたらいい」と、求職者の方には伝えたいですね。うちで頑張ったら、きっと自分の可能性に気づけると思いますよ。
ー 会社が40周年を迎えて、これからの会社はどう変わっていきますか?
今、創業から40年。だからこそ「もう一度、畑を耕そう」と思っています。
“畑”っていうのは“環境”のこと。社員が育つ環境、協力会社さんが働きやすい環境。今までの仕組みをもう一度見直して、若い世代にバトンを渡していきたい。たとえば現場のやり方を全部平準化して、どの現場でも同じクオリティで動けるようにする。監督によって言うことが違うっていうのは業界あるあるだけど、うちはそこを変えたい。金太郎飴みたいな会社。どの現場でも安心して働ける会社にしたいんです。
ー では最後に、これから応募してくる方々にメッセージをお願いします。
「すごいね」って言われる会社じゃなくて、「いい会社だね」って言われる会社にしたいんです。
社員の家族がホームページを見て、「パパの会社、いいね」「ママ、楽しそうだね」って言ってくれたら、それが一番の誇りです。頑張った分だけ、ちゃんと評価される仕組みはあります。でも、最終的には人間性。嘘をつかずに、こつこつ続けられる人が、うちでは一番伸びるんですよ。
人生って、環境で変わります。だからまずは一歩、踏み出してみてほしいですね。やってみなきゃわからない。それが人生だと思うんです。